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旨さの秘密
たかが、うどん。されど、うどん
うどんは、小麦粉と塩に水を加えて練りあげたシンプルな食べ物です。それゆえ、素材や作り手によって大きく味が変わります。シンプルで奥深い世界に飛び込んで40年。ようやく、自信を持っておすすめできる一杯をお出しできるようになり、お客さまからも『いろりやのうどんは旨い』と評価いただけるようになりました。そんないろりやの味を支える、私たちのこだわりをご紹介します。
【こだわり#1】厳選した素材しか使いません
小麦粉 - 30年前から、北海道産チホク小麦をメインに使用。香り、甘み、粘り、コシ、ノドごし等すべてにバランス良く、小麦本来の繊細な風味が味わえます。国産各地の小麦を試し、こちらに落ち着きました。また、いろりやではポストハーベストの心配があり、船便・コンテナ輸送で高温にさらされる輸入品小麦粉はいっさい使用しておりません。小麦粉(Wikipedia)>>
水 - うどんの約60%は水分。だから、水の良し悪しはうどんの味を大きく左右します。いろりやでは30年前から、四万十川支流の上流ブナ原生林の近くの伏流水を使用。軟らかくまろやかな口当たり、弱アルカリ性、豊富なミネラル成分を特長とする良質な天然水で、高知県当局の水質検査もクリアしています。
四万十川(Wikipedia)>>
塩 - 1億4千万年前まで海底にあったモンゴルの自然岩塩を使用。海底に沈殿した甲殻類、昆布等のカルシウムやミネラル成分が含まれるせいか、一般的な海水塩と比べてコクがあり、より深い味わいをもたらします。以前は黒潮町の海水塩を使用していましたが、こちらが理想とする食味を得られるため使用を続けています。
塩(Wikipedia)>>
出汁(だし)- 四国最南端の土佐清水市は古くからめじか(マルソウダ)の水揚げ地として知られ、めじかを加工した宗田節の全国シェア約7割を誇る産地です。いろりやでは、昔ながらで手作りされる土佐清水産宗田節をベースに、土佐市宇佐産カツオ節、四万十原木椎茸、北海道産利尻昆布を調合してだしをとります。宗田節/カツオ節にはイノシン酸、椎茸にはグアニル酸、昆布にはグルタミン酸の旨味成分が含まれますが、複数の旨み成分を掛け合わせることで、さらに味わい深い奥行きある旨味が形成されます。
出汁(Wikipedia)>>
鰹節(Wikipedia)>>
【こだわり#2】素材の調合に絶えず目を配ります
振り返るに、チホク小麦は出会った瞬間から使ってみたいと思わせる完成度の高い小麦でした。しかし、同小麦はパン・お菓子用向け品種のため、繊細過ぎてうどんには不向きということが判明。『ゆで伸び(ゆでた後にすぐに伸びてしまう)』 の原因となる劣化の早さや、『発酵工程』に時間がかかるため品質にバラツキが生じやすい等、これまでと同じやり方では良いものが作れませんでした。メゲそうな日々が続きましたが、粘り強く試行錯誤した結果、丁寧に踏み固め強靭なコシを作ることで『ゆで伸び』を解決。『発酵工程』は、四万十川の伏流水を使用したことで一気に解決を見ました。水道水ほど強い塩素滅菌処理をしないことで、良質な発酵を助長するミネラルや天然成分が多く残されていたため、相性の良い小麦と水の組み合わせがこうして誕生しました。
当時、この小麦でうどんを作るケースはなかったようで、北海道庁農政部局の方々がいろりやまで来られたこともありました。いろりやでは、こうした素材の組み合わせや調合に絶えず目を配っています。
【こだわり#3】手仕事の技を磨き続けています
素材が決まれば、あとは手仕事。小麦、水、塩を練り上げたものを数時間寝かしておくと発酵し始めます。さらに一晩寝かし続けるとじんわり湿気を帯び、つきたてのお餅のように輝きながら艶を増してゆきます。この団子を何度も何度も踏み鍛えることで、コシと粘りのあるうどんが出来上がります。うどん作りにまつわる『土三寒六』と言葉があります。夏の土用丑の日の頃と冬の寒中の頃を例にとり、四季の温度変化に対する塩分濃度のさじ加減を表した言葉と言われますが、長年の経験から発酵にかかる時間の違いを示した言葉ともとれます。それくらい発酵工程は見極めが難しく、目配りが欠かせません。
いろりやでは工程の大半をいまだ手作業で行っていますが、製造工程の最適化を目指し、職人達が技を磨き続けています。
【こだわり#4】日々、1000年の誇りと責任を忘れません
うどんの原型が日本に伝わったのは遥か1000年も前、遣唐使が活躍した奈良時代(※Wikipedia参照)とも言われます。1000年にわたり愛され続けるには、主材料の小麦の旨さ以外の理由もあるはずで、いろりやは仮説として二つあると考えます。一つは素材が入手しやすく、作りやすいこと。しかし、日本は一年を通じて気温や湿度が変化するため、プロでさえ同じ材料を同じ分量で作っても、同じ味や食感のうどんが出来る訳ではありません。
だから、二つ目は作る人を魅了する奥深さがあるからこそだと考えます。ゆえに、技や品質、味や食感の向上が1000年以上にわたって繰り返され、人を飽きさせることなく進化し続けてきたのではないか、そう考えています。
うどん作りを始めて40年、振り返ると1日と同じ日はありませんでした。朝起きたとき一番気になるのは、40年前も今日もその日の気温と湿度です。いろりやの今日が1000年を刻んできた1日であることに誇りと責任を感じながら、今日のうどんはおいしく食べてもらえるやろうか?、スタッフ一同そんな思いで、一杯のうどんをお出ししています。
【こだわり#5】食は人、食は地域。食に対する強い想いがあります
いろりやでは、『食べることは生きること。食はすべての生命の活動の源』と考えており、出来る限り地域の旬な食材を使いながら、地産地消、身土不二、医食同源といったテーマにも取り組んで行きます。美味しさを三里四方から - 多くの旅行者に評価されているように、高知県はローカル食材の宝庫です(※)。中でも四万十川、黒潮、豊後水道の恵みを受ける幡多地域は、県内随一の食材の産地と言えます。いろりやでは、恵まれた環境で受け継がれてきた郷土料理のエッセンスを取り入れたメニューを提供します(※リクルート社『じゃらん』による調査「地元ならではのおいしい食べ物が多かった都道府県」で、高知県は2017年第1位、2018年第2位に選ばれました)。
食の安全性が叫ばれる時代に - いろりやでは、地元の農家や漁師さん等の生産者と顔の見えるお付き合いを続けています。いろりやと生産者が一緒に食の安全を考え行動することで、初めてお客さまに安全・安心をお届けできる、そう考えます。今後もできる限り、地域食材を使っていく予定です。
近い、だから新鮮 - いろりやでは、安全性と美味しさの観点から新鮮さにこだわります。遠くにあるものを多くの手間やエネルギーをかけて運んでくるより、近くでとれたものを新鮮なうちに提供したい。また、その日使う分だけ作ることを心がけ、具材もできる限りその日中に使いきるよう心がけています。こうした取り組みが、やがて地域社会への貢献にもつながる、私たちはそう考えています。
旬に勝る旨いもの無し - 食材を美味しくいただく秘訣は、食材の旬を逃さないこと。しかし、旬は気候や生育状態などにより刻々と変化します。いろりやでは、生産者とのコミュニケーションを欠かさず、旬を見逃さないよう心がけています。春夏秋冬を通じて少しづつ変化するメニューをお楽しみください。
食べるものを手作りする - 手で何かを作ることは、少し前まで当たり前のことでした。いろりやではすべてのメニューを、人が作っています。手作りゆえに大量に作れませんが、自分達の目の届く範囲ですべて提供することを優先したら、こうなりました。人の手で作られたものにはきっと特別な力がある、そう信じたいのです。昨日と今日とでほんの少し味が違うことがあるかもしれませんが、なにとぞご了承ください。
今日も一杯のうどんをご用意して、お客さまのご来店を心よりお待ちしております。
いろりや店主敬白